おじいちゃんへの花束

“じいちゃん”の退職が近づいたある日、娘が「こづかいで花束を買いたい」と言い出した。予算は1000円で、それを使ってしまうとほとんどお金が残らない。でも、退職は大きなイベントであるので、どうしても買ってあげたいと言うのだ。

娘にとっては大金なので、そのくらいあれば、とても大きな花束が買えるものと信じている。でも、花の値段がわかる大人達は、小さな花束にしかならないことを知っている。親戚のおばさんが、一緒に買おうと誘ってくれたが、自分の力で買えるからと、娘は断ってしまった。

花束を買いに行く日になった。花屋の店先には、600円くらいのかわいいミニブーケが“お買い得品”として売っている。小学生にはこれでも十分だと思うが、花束と決めている娘は譲らない。ところが、店員はせいぜい4〜5本しか花を組み入れられないと言う。その程度では、娘のイメージする花束にはならないのだ。そこで、理想とする花束を目指し、いくつかのお店を回ってみようということになった。

しかし、どのお店に行っても結果は同じ。4軒目でとうとう立ち尽くしてしまった。その姿があまりにもかわいそうで、私もポケットマネーを出し、2000円の花束を作ってもらった。イメージする花束に少しは近づいたが、花の値段はけっこういという現実を知り、神妙な面持ちだった。

“じいちゃん”のためにお金を使ってくれたことは、親として嬉しい。物の値段を知る経験が出来たことにも満足している。でも、なんだかしっくりこない。お金を出してあげたことが本当に良かったのか、身の丈にあったお金の使い方を教えるべきだったのではないか、自問自答している。

2010年4月7日